北三さんを訪ねたきっかけ
当店は仏壇販売を始めて45年目を迎えました。その経験の中から私が考案したのが、本物の木でつくる厨子「虚空厨子」です。木目も色も、二つとして同じものはありません。
ところが最近になって、制作をお願いしている工房から、黒檀とカリンの突板が足りず、このままでは虚空厨子が作れなくなると知らされました。そこで「突板」とネットで検索し、ご縁をいただいたのが東京・江東区の北三株式会社(ホクサン)さんです。ホームページを拝見して驚き、2026年9月15日、工房の方と当店スタッフとともに見学に伺いました。
今回は、そこで見せていただいた突板の世界と、虚空厨子の木のお話をお届けします。
そもそも「突板」とは
木の使い方には「無垢」と「突板(つきいた)」の二つがあります。無垢は木をそのまま切り出した板、突板は木を薄くスライスして下地の板に貼ったものです。どちらも表面は本物の木で、優劣ではなく使い分けです。

| 無垢 | 突板 | |
|---|---|---|
| つくり方 | 丸太から板を切り出し、そのまま使う | 銘木を約0.2mmに薄くスライスし、合板などに貼る |
| 見た目 | 断面まで同じ木。重厚な存在感 | 表面は本物の木目。柄の揃った仕上げができる |
| 反り・割れ | 湿度で動きやすく、手入れと乾燥技術が要る | 下地が安定しているため狂いにくい |
| 選べる樹種 | 太い原木が手に入る木に限られる | 希少な銘木も少量から使え、種類が多い |
| 重さ・価格 | 重く、銘木ほど高価 | 軽く、銘木を手の届く価格で使える |
突板の国内の標準の厚さは約0.2mm。その基準をつくったのが北三株式会社です。銘木を薄くスライスすることで、一本の丸太から、より広い面積の天然の木目を生み出せます。

北三さんのショールームで
北三さんは1924年創業、約100年続く突板の総合メーカーです。見学では、突板の実物を手に取りながらお話を伺いました。

- 1950年代に世界で初めて0.2mmの切削に成功し、突板の国内標準をつくった会社です。
- 世界中から集めた150種以上の樹種を揃え、取扱い樹種の量は国内No.1。他では扱いのない樹種もあります。
- 原木の買付けから突板の製造・加工・販売までを一貫して手がけています。
- 小物から家具、壁面、車の内装まで、厳しい条件と意匠に応えてこられました。
- 創業以来「木を生かす」を掲げ、木を薄くして資源を大切に使い、木の文化を次の世代へ残すことを目指しています。

心に残ったのは、木の調達そのものにも循環の考えが貫かれていることです。北米で栽培されるクラロウォールナットは、まず果樹としてクルミを収穫し、役目を終えた老木を木材として使う二段階の活用。南米ボリビアでは、区画ごとの全木調査で伐る木と種を残す木を選び、自然に落ちる種から森が再生するようにしているそうです。

黒檀やカリンのように、太い無垢材がもう手に入りにくい銘木でも、突板なら本物の木目を生かせます。私たちが探していたのは、まさにこの力でした。
突板は薄いからこそ、柔らかく曲げたり、光を透かしたり、ガラスやアクリルと貼り合わせたりできます。本物の木の風合いのまま、使い道が大きく広がります。


虚空厨子と北三さんの突板
2026年9月30日には、虚空厨子の工房も北三さんと連携していくお話が進みました。北三さんの突板をどのように虚空厨子に生かしていくか、いま工房と検討を重ねているところです。菩提樹での制作も検討を始めました。
よくあるご質問
Q. 突板は「本物の木」ですか?
A. はい。表面は天然木を薄く削ったものです。木目を印刷したシートとは違います。
Q. 無垢のほうが良いのではありませんか?
A. 優劣ではなく使い分けです。無垢は重厚さと手ざわり、突板は狂いにくさと樹種の豊富さが持ち味です。
Q. 同じ木を選べば、見本と同じ見た目になりますか?
A. 天然木なので、木目や色は一本ごとに違います。それが世界に一つの厨子になる理由です。
Q. 黒檀やカリンの虚空厨子はもう手に入りませんか?
A. 現品限りです。気になる方はお早めにご相談ください。
おわりに
見学をご案内くださった北三株式会社の皆さまに、心より感謝申し上げます。一枚0.2mmの突板には、一本の木を大切に使い切り、次の世代へつなぐ思いが込められていました。その木で、お客様の大切な厨子をお届けしてまいります。
有限会社ルネサンス(桜梅桃李.com) 島 幸弘